リレーエッセイvol.8  『初心忘るべからず』  中倉宏美
 
   久々に昔の日記を開いてみた。
 
   16歳でプロデビューしてからもうすぐ10年をむかえようとしている。
   10年、、、その響き、その時間は一体どれほどなのだろう?
   書きたいときだけ書いていた、いい加減な日記だが、プロデビューが決まった頃の
   ものはさすがに今見てもその嬉しさが滲み出ている。
 
   「9月25日・・・・本当にいろいろな人にお祝いしてもらって感謝している。ときおり
   嬉さが溢れて突然泣きたくなる。苦労したほうなのかどうなのか、それはわからな
   い。でもホッとしている。今までやってきたことがすべて正解と思える。嬉し涙でこ
   んなに泣いたのは初めてだろう・・・・」
 
   それから、発表はできないけれど、決意に満ちた言葉が並び、、この気持ちは絶
   対忘れない。本当に一生忘れない。と締めくくってあった。
   我ながら熱い、、、熱すぎる。。。
   しかし、今、本当に同じ気持ちを持ち続けているだろうか?
   これを読んだとき、チクっと胸が痛かった。原点を振り返るには十分だった。
 
   感情が高ぶるとき、苦しいとき、文章に書いて吐き出してしまいなさいと師匠から
   教わり日記とともに書いてきた。パラパラとめくると文字も歪んで、解読不能な文
   章の羅列もある。
   ただ、目の覚めるような一言、嬉しかった一言、良かったことも書き留めるようにし
   て、それらに自分自身励まされているようだ。
 
   いろいろな事があったな・・と振り返る。
   いろいろな人に支えられて今の自分があるのだな、とあらためて思う。
   そして、こうして女流棋士としての日々を送れるのも、このホームページをご覧いた
   だいている皆様をはじめ、将棋界、女流棋界を応援して下さっている方々のおかげ
   なのだなと思う。
   自分は、特別な才能があるわけではない。
   ただ日々、将棋道に精進することでしか感謝の気持ちを示せないけれど、
   でも・・・自信をもってやっていこうと思っている。