私と将棋島井咲緒里
「魂を燃やす場所」島井咲緒里
 
  私が将棋を覚えたのは、6歳の時。現在24歳なので、今までの人生
の3/4を将棋と共に生きてきたという事に、自分でも驚きを覚えます。
 祖父が将棋が好きで、3つ上の兄と一緒に自然と覚え、すぐに近くの将
棋クラブに通うようになりました。そのクラブの先生が最初の師匠であり、
そこに集まる将棋好きのおじさん達のおかげで強くなる事が出来ました。
 ずっと将棋が好きで好きでたまらない、というわけではありませんでし
た。学校が終わって友達と遊びたい時など、だだをこねて泣きながら母
に通わされたこともありました。母の「何でも10年続ければ何かを得る」
という言葉がとても印象に残っており、母のその想いがあったからこそ今
の私がある、と感謝の気持ちでいっぱいです。
 頑固な私は、一手に2時間考えた事があるそうです。子供の頃は非常
に長考派でしたが、その時は考えてるというより何を指していいかわから
ず時間の経過とともにどんどん指せなくなったのです。昔は頑なでものす
ごい引っ込み思案だったんです。隣で見ていた母は相手のおじさんに申し
訳なくて気が気じゃなかったようですが、おじさんは何も言わずひたすら
私が指すのを待って下さいました。後になれば本当に申し訳なかったと思
いますが、そんな風にやさしい皆さんに支えられて、将棋を続ける事がで
き心から有難く思っています。
 育成会時代やプロになってからも、地元強豪の方達にマンツーマンで教
えていただいたり、大変お世話になりました。高知で将棋を指す女の子は
いなかったのもあり、県内の将棋ファンの皆さんにはずっと暖かく見守っ
ていただき、本当に私は幸せ者だと思います。
 
 今でも対局前には、地元のお世話になった方達の顔がたくさん浮かんで
きます。私が出来るのは、遠い高知の皆さんにまで届くように精一杯頑張
って結果を出す事だけ。これからも少しでも御恩を返せるように頑張りた
いと思います。
 
 当たり前のようにいつも傍にあって、空気のようなもの。私にとっても
将棋はそういうものでした。しかし立ち止まって、何故将棋を指すのか?
女流棋士である自分とは何なのか?そういう事を改めて考えると、全て自
分が選んだ道でありこれから自分がどう将棋と向き合っていきたいのかと
いう事が、よりくっきりと意識されました。
 今私が思うのは、自分にとって将棋とは“魂を燃やす場所”です。ずっと
「心をめいいっぱい使って全力で生きる」という意識で、人生は戦いだと
思って、辛い事も苦しい事もひっくるめて楽しみたい。そういう想いで生き
てきました。もちろん将棋以外の事もたくさんありますが、やはり私の人生
は将棋中心ですから、負けると身を切られるように辛いし勝って泣いた事
もあります。
 一局一局に全身全霊をかけて、命がけで臨む。そういう自分でありたい
と、今は強く思います。そういうものがある事が幸せであり、いつまでそう
在れるかわからないからこそ、今はただ、自分の中の魂が震えるような
勝負をしたいと思います。将棋によっていろんな想いをもらってきましたが、
これからもより一層熱い想いを将棋にぶつけていきたいと思います。