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| (大庭美夏)----よろしくお願いします。今日は上野で写真撮らせていただいたんです |
| けど、動物園は念願だったんですって? |
| (山田久美)うん。3歳か4歳くらいかなあ、家族で行こうって話になって楽しみにして |
| たら、なんかの都合でキャンセルになって「上野動物園じゃなくてもいいから『シタノ』 |
| 動物園でもいいから連れてってえ」って大泣きしたんだって。 |
| それからずーっと来る機会がなくって、30年くらい経ってようやく、用事で家族が出て |
| 来ることになったんで、じゃ帰りに上野動物園寄ってこうよって行ったら休園日。 |
| ----あらぁ。 |
| 今日あれだけごったがえしてた入り口のところに、ぽつんと「今日は休園日です」って |
| 看板があってさぁ。 |
| ----かなしい・・。 |
| だからもう生まれてはじめて、パンダ。かわいいねやっぱね(笑)。テレビで見るパンダ |
| しか知らないじゃない。 |
| ----でも、上野ってけっこう通るんじゃないですか。 |
| 乗り換えの駅でしょっちゅう。電車も高崎線使うから上野から乗って行くし。でもほとん |
| ど駅の外出たことない、からね。 |
| ----お仕事で全国まわってると思うんですけど、行ったことない県ってありますか。 |
| ええと・・和歌山県、あと、鳥取・・かな。 |
| ----ふたつだけですか。 |
| あとは九州・・あ、宮崎は行ったことないんだ。ずっと長崎にも行ったことなくて、この |
| 間、去年の名人戦(※第61期第3局)の時に、やっとクリア。 |
| ----じゃああと3つ4つ、くらいですか。沖縄は? |
| 沖縄は何回も行ってる。天王戦の記録で、森下さんが優勝したときかな、行って、その |
| 前にも那覇支部に何度か。あと週刊誌の企画で行ったりとか、沖縄はけっこう行ってる |
| んだ。第一この世界に入って初めて行った遠出が沖縄だったから。星さんっていう将棋 |
| 普及に熱心な人がいたころはずいぶん行ったんだよね。 |
| ----そうやって全国まわってらして、どうですか。将棋の仕事っていろんな人に会える |
| 仕事ですよね。 |
| うんうん。 |
| ----特に久美さんはそういう機会が多いと思うんですけど、年間でいうとどれくらい? |
| 数えたことないけど、イベントを単発もので数えると、月に2回はどこかしら行ってるね。 |
| だから昔はね、土日で空いてる日はなかったんだよね。 |
| ----女流棋士でも月〜金忙しいタイプと土日忙しいタイプいますよね。 |
| ああー、もう全然土日忙しいタイプ。週休5日制?(笑) |
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| ----今レギュラーで行ってるところってどれくらいあるんですか。 |
| 月1でお稽古に行ってるところが2ヶ所。埼玉の蓮田にある筋ジストロフィーの人たちの |
| 養護施設と、あとはやっぱり埼玉なんだけど、5〜6人のちょっとした将棋の会。 |
| ----サークルみたいな? |
| そうそう。あとは2ヶ月にいっぺん行ってる会社の将棋部、あと単発っていうか年に1回 |
| 呼ばれるところが、春日部、滋賀県の長浜、とかは必ず1回呼ばれる感じかな。 |
| ----えっ、でもじゃあレギュラーっていうか固定しているところは・・。 |
| 毎月行ってるところは2ヶ所だけ。もうだからあとはほとんどイベント。 |
| ----ああ、そうなんですか。 |
| それなくなったら何にももう・・食べられない時代が(笑) |
| ----でも、そう考えると保証がない世界ですねえ。 |
| うん、保証ないからね。 |
| ----死のロードとかいって。 |
| 夏はね。今年も死のロードだったなあ、7月の半ばから8月の4日までずーっと出っぱ |
| なし。 |
| ----レギュラーとはいわなくても、何年かにいっぺんとか、順番で、とかで呼んでもらえ |
| るところが多くて、それが積もり積もって多いって感じですかねえ。 |
| だから例えば今年の夏はすごく少ないけど、次の年にわーっとまとめていっぺんに来る |
| とかね。 |
| ----最近は、会社の将棋部とかお稽古とか、なかなか厳しいじゃないですか。女流棋 |
| 士になりたてのころって、めずらしくて声かけてもらったりとか、そういうこともある |
| と思うんですけど、それをキープするのが難しいと思うんですけど。 |
| あのねえ・・うち両親とも働いてて、母親なんか時給いくらとか、そういう仕事もしてたこ |
| ともあって、仕事に関して、働く場所があることにまず感謝をしなさい、そこで一生懸命 |
| 仕事しなさい、と。今、一日一万円くれるとこってないんだよね、(時給の)仕事で。だけ |
| どそういうところが月に一回あれば、それだけ収入になるわけじゃない。何もなければ |
| ゼロなわけじゃない。だから、何もしないでうちにいるよりは何かしらあって行ったほう |
| がいいっていうふうに、子どものころから、デビューしたころからいわれてたから・・仕事 |
| に関しては、相手さえいればわたしはどこでも行きますよ、今でも。 |
| ----わりと、そう、ですよね。 |
| 自分にできることは将棋指すことだけで。で、一回だけ呼ばれるのは誰でもできるんだ |
| よね。長く呼ばれるには何かしら自分がそこに気に入られなければいけないわけじゃ |
| ない。まあ一回行って、一回ぽっきりで終わっちゃったところも数多くあるけれども、こ |
| の人たちは女流棋士の山田久美を呼んで何を求めてるのかって。山田久美じゃなくた |
| っていいわけだから。まず将棋が指せるってことでいえば女流棋士じゃなくても(棋士 |
| でも)いいわけだし、でも何で女流棋士呼ぶかっていったら、やっぱり男の人が多い世 |
| 界だから、女の子呼んで、その場がぱっと明るくなるような感じのほうがいいからかな |
| って。山田久美じゃなくてもいいわけだけど、それをあえて呼んでもらうにはどうしたら |
| いいか、こうすればお客さん喜ぶんじゃないかっていうのは、考えてやってきた。 |
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| ----プレイヤーとしての部分もあるから、そういう気遣いと両立させるのはむずかしい |
| 面もあると思うんですけど。 |
| でもイベントって基本的に土曜日曜が多いし、呼ばれるところも平日より土日が多いわ |
| けだから。だから例えば対局は月曜とかは絶対入れない。まあほんとはね、対局の都 |
| 合でそっちが断れるくらいになればいいんだけどね。「対局が忙しいんで」ってね。 |
| ----久美さんがお客さんに気に入られるために、媚びてるかというとそうでもないし。 |
| 媚びることは絶対しないね。 |
| ----むしろ厳しいお稽古ですよね、わりと。 |
| 別に厳しいお稽古ってこともないけど(笑)。昔ね、佐瀬先生にいわれたんだけど、平均 |
| 年齢80歳くらいの会に行ったのね。こっちは若いから、みんな勝つわけ。そうすると、 |
| 「久美ちゃんね、この人たちは何もこれから将棋強くなろうと思ってやってるわけじゃな |
| い、楽しく将棋を指したいんだから、もうちょっとね、どうにかしてあげなさいよ」みた
いな |
| こといわれて「あーなるほどなー」と。でもやっぱり、いまだにできない。多少お稽古な |
| んだって気持ちで、少しは楽しませるような雰囲気にはもってくんだけど、最後はやっ |
| ぱり勝ちたいでしょ(笑)。 |
| ----ね、なんかそういう感じなんですよね。真剣にやってらっしゃいますよね(笑)。 |
| だって真剣じゃなきゃ、申し訳ないもん。手を抜いて楽しませるほどの芸当はまだでき |
| てないから。例えば大山先生とかあの辺のクラスになれば、うまく手を抜いて喜ばせて |
| あげるとか、いろいろ楽しませるようにはできるんだろうけど、一局の将棋で、やっぱり |
| 最後は勝ちたくなる。自分でも甘いなと思うんだけど。 |
| ----短期的に考えれば、お愛想いったりやさしく指したり、そういう方がいいのかなあ |
| とも思うけど、逆にそうやって本音でおつきあいするのが長く続くこつかなあ、なん |
| て見てて思ったりもするんですけど。 |
| どうなんだろうねえ。いやーだけど・・もっと若いうちは、将棋だけ指してお客さんに楽
し |
| んでもらえればいいかなって時期ももちろんあったけど、30過ぎるとね、それじゃあ
仕 |
| 事来ないんだよ。 |
| ----そうですかね、やっぱり。 |
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若いうちはそれだけで仕事が来るけど、30過ぎて呼ばれたところをまた長く続けて行く |
| にはやっぱりそれなりのね、努力をしないと。企業秘密だけどね(笑)。 |
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| ----あははは。でもわたしもたまに久美さんと会うと、話してて親戚のお姉さんって感 |
| じがするんですよ。 |
| ああー。 |
| ----小さいときから知ってるせいもあるかもしれないけど、いとこのお姉ちゃんみたい |
| な感じでしゃべりやすいんですよ。で、たぶん、年にいっぺん呼んでるおじさまたち |
| も、姪っ子とか・・ |
| 娘とかね。 |
| ----そう、そういう雰囲気に思ってるんじゃないかなあと。 |
| まず基本的に自分はえらくないんだってこと。よく先生先生って呼ばれるから先生みた |
| いに思っちゃうけど、確かに凛とした態度でいかなきゃいけない場合もあるけれども、そ |
| れは将棋を指しているときだけで。よく言うのは「将棋を指してる間は先生先生と呼ば |
| れてもかまいません。だけど宴会とかになったりしたら、久美ちゃんとか山田さんとか、 |
| そういう風に呼んでください」って。わたしのほうがお客さんたちより年が若いわけだか |
| ら、50代60代の人にこっちが先生って呼ばれるのおかしな話じゃない。宴会とかのと |
| きはこちらのほうが学ぶ点が多いんだから。 |
| ----でもそうやって先生ってことじゃなくしちゃうと、馴れ馴れしくっていうか、けじめが |
| なくなっちゃったりするかもしれないし、間合いがむずかしいなあと思ったり・・人づ |
| きあいの経験値ってことですかねえ。 |
| わたしね、子どものころ父親にいわれたことにずいぶん影響受けてるんだよね。「人を |
| 怒らせたり泣かせたりするのはすごく楽なことなんだ」と。「だけど、人を喜ばせたり楽し |
| ませたりするのはものすごく大変なことだから、言葉で相手を傷つけたりしてはいけな |
| い」っていわれて。たったひとことで相手を喜ばせたり傷つけたりするってできるじゃな |
| い。そういうところは多少気を遣っているつもりではいるんだけどね。親しい間柄になる |
| と、けっこうきわどくいうでしょ。だけどお客さん・・お客さんっていうんじゃないな、年上 |
| の人には自分のほうが後輩だからって気持ちのほうが大きいね。 |
| ----けっこう先輩後輩を大事にするタイプですよね。 |
| いやいやそんな、体育会系じゃないからそういうのはないと思うけど。若いころは、自 |
| 分ではわかってるつもりなんだろうけど、この年齢になってくると「ああ若いうちはわか |
| ってなかったんだ」って思うわけじゃない。自分よりも10も20も先輩の人たちはそれだ |
| け経験積んできてるわけだし、そういう人たちのいうことがすべてが正しいとは思わな |
| いけど、やっぱり正しい面が多いから。で、多少なりとも自分が経験してきたことは、後 |
| 輩たちに教えてってあげられたらな、っていうのもあるね。 (part.2へつづく) |