女流棋士にあこがれてここだけの話〜清水市代3〜
−−今、女の子で将棋はじめて、将棋が
   好きで、ずっと指したいって思ったとき
   に、道が2つありますよね。
   女流棋士を目指す道と、奨励会に入
   って、っていう道と。
清水「ああ、はい」
−−ご自身は女流棋士を最初からめざさ
   れて、やってこられて、でも別ルート
   でやってくる方もいて。今いろんな方
   が女流棋士にいるんですけど・・棋士
   に なりたかったって思うことあります?
清水「棋士??わたしはもともと女流棋士
    になりたくてこの世界に入ったんで。
    女性にしかなれないのが女流棋士、
    っていうあこがれがあって。華やかだ
    しね、すごくあこがれがあったから、
    奨励会についてとかよく聞かれるけ
    ど、自分の中ではそういう選択肢は
    なかったから」
−−じゃ今でも、棋士になりたいとかはないですか。
清水「棋士・・棋士になるってどういうことなんだろうか。正会員になって保証される っていう
    意味かなあ」
−−そっちの意味もあるかもしれないし、全棋戦参加して、っていうプレイヤー としての意味
   も両方あると思うんですけど。
清水「たしかに将棋は好きだし、みなさんに見ていただける将棋を指すっていうことは すごく
    幸せなことだから、1局でも注目される将棋を指すっていう欲というのか、 希望は確か
    にあるけれども、目指してるものが何かにもよると思う。全棋戦参加 することが自分に
    とっての夢ではないので。前は全然出られなかったけど、今は タイトル保持者になれ
    ば、いろんな棋戦に出させてもらえるし。逆に言うと、女 流棋界の方がこの先未来が・・
    実力的にも、世界的にも魅力があるので、そちら に対して自分の担う役割が大きい方
    が楽しみ。・・あまのじゃくかな?(笑)」
    
−−いえいえいえ。なかなかでも今女流棋士自身が、自信を持ってそういう風に 思いにくい
   ところが、もしかしたらあるんじゃないかと。
清水「あるのかな?」
−−やっぱりいわれやすい立場のような気もするし、なんというか・・将棋界に 対して貢献し
   てるっていう自負はあっても、評価が低いってこと、かなあ。評価 っていうのはいろいろ
   ・・いろんな面で、認められたいってところがあるんじゃ ないかなって。
清水「人それぞれ目的が違うと思うし、立場も違うから、みんな方向が違って、それは 当たり
    前だと思う。基本的に勝負の世界なので、どうしても結果がすべてで評価 されやすくな
    っちゃうところもある。だから評価をされにくい部分、はあるけれ ど・・ただ徐々に開かれ
    てきているとは思うんだけれども」
−−目的って、人それぞれ違ってていいんでしょうか。
清水「大きな目的は、何かあると思うんだよね。でも、方法はそれぞれ違うと思うし、 立場も違
    うよね。たとえばタイトルをとりたいって思う人だったら、技術的なも のとか心技体の向上
    につとめるのが義務であるだろうしつとめだろうけれど、普 及の面で、誰よりも沢山とか、
    上手に人に教える、っていう目標を持って いるんであれば、教え方を上手になるっていう
    のが大事。わたしとしては、女流 棋界の未来、発展につながることをしたいと思ってるし、
    そういうことをみんな で考えてるってことが大事だと思う。できるできないは、一回やって
    みなくちゃ わからないけれど、そこへ向かって進んでることなら、人が非難しちゃいけない
    と思う。わたしがこうやってるんだからあなたもしなさい、っていうのも間違っ てるし、誰か
    がやってるからわたしもしなくちゃいけないかな、って思うのも、 ちょっと違うかなって」
 
 
将棋講座では鍛えられました
 
−−女性と男性の将棋って違うと思いますか。
清水「基本的に、人間の作りとして女性と男性
    は違うと思います。で、そういう意味で、
    いろんな得手不得手があるとは思って
    る。一緒だとは思っていないのね。ただ、
    男性の将棋、女性の将棋っていったとき
    に、男性だってピンからキリまでいて、女
    性も幅があるから、一概にそれに対して
    返事をすると誤解を招くので、できない。
    たとえば個人名を出して、羽生善治の将
    棋と、清水市代の将棋は違いますかと聞
    かれれば、答えられるかなっていうのは
    あるけれど」
−−男でありこういう性格でありこういう環境である羽生さんと、とか要素のひ とつとして影響
   はあるだろうけども、大きく男性女性っていうくくりだと。
清水「幅が広すぎて、どこをどう取って比べていいかわからないし。あと、解説で 一番いやだ
    なーと思うのは、『さすが女性で攻め将棋ですね』って解説の人がお しなべておっしゃ
    るけども、本当に見てくださってるんですか、って。女性だっ て受け将棋の人はもちろん
    いるし、決めつけていっちゃうとつまんないなって。 清水さんは攻め将棋です、っていっ
    てくれる分にはいいと思うんだけど」
−−女流棋士は今聞き手って立場が多いですけど、解説も機会があったらやって みたいと思
   いませんか。
清水「何度か席上対局で経験はありますし、女流の解説だったら、人をよく知ってるか ら、解
    説もいいかなと思ってるんだけどね、男性が聞き手で女性が解説しても。 なにが大切か
    っていうと見ている方が楽しいのが一番だから、そういう人選がい いかなって思ってる
    んですけどね」
−−時と場合によってはいいですよね。たとえば鹿島杯とか。
清水「プロフィール的なこととかだったら女流同士の方がね、いえることも 多いだろうし」
−−清水さんの解説、見たい人いっぱいいると思いますよ。
清水「やってみたらけっこう大変なんだけど、NHKの将棋講座をさせていただいたと きに、ず
    いぶん鍛えられたから。むずかしさも知りましたし。将棋講座も今まで 男性ばっかりだっ
    たんで、最初に頼まれたときはやっぱりちょっと無理だ、と思 ってお断りしたんだよね。
    で、まあ少し経って、また今回改めて頼んでもらって、 一回女性がこの講師やらせても
    らってれば、次につながってくかな、と思って、 危険を覚悟で(笑)」
−−ホームページでも、清水さんの講座を見て女流棋士を知って、検索してここ にたどり着き
   ましたっていうのがけっこうありました。
清水「ほんと?一件でもあればもう、やった甲斐があります。それはよかった」
 
 
目的、立場、らしさ
 
−−HPで、女流棋士を目指す人にひとことってい
   う質問に「目的、立 場、らしさ」って答えていら
   っしゃいますけど、ご自身の「目的、立場、らし
   さ」 はどういう風に考えてらっしゃいますか。
清水「今はタイトルを持たせてもらってるんで、タイ
    トル保持者としてはタイトルを防衛することに
    全力を挙げるのがつとめだと思ってます。また
    勝負師としての立場ならば、勝つことにこだわ
    らなくちゃいけないと思うので、技術の向上に
    充てる時間を作っていくのがつとめだと思って
    ます。で、女流棋士としてだったらば、やっぱ
    り女流棋士にしかできない普及がたくさんあ
    ると思うのね。わたしの普及の定義としては、
    『将棋を全然知らない方に魅力を知っていた
    だくのが普及』だと思っているので、そういう
    方に知っていただくために、タイトルをとって
    皆さんに見ていただいたり、マスコミの皆さん
    に出していただいたり、講演に行くのもそうだ
    し。そういうのはタイトル持っているからでき
    ることだから」
−−マスコミには機会があれば積極的に出ましょう、って方針ですか。
清水「見る方がお子さんであったりとか、将棋を全く知らない方ですっていうところに は、時間
    の許す限り出るようにしてます」
−−将棋と縁のない人に出会ってもらうことを意識して。
清水「というか、それしか考えてない、普及に関しては。自分が女流棋士にあこがれて この世
    界に入ってるから、女流棋界がもっともっと発展していってもらいたい、 っていう強い思い
    があるので、女流棋士のことを、もっと知ってもらいたいと思 っています」
 
 
チーム戦は楽しい
 
−−そういえば最近、市代さんたちが出たドラマのビデオがある、っていうんで、 比江嶋さんと
   妹と3人で見たんですよ。
清水「あっ、ありましたね、殺人事件起こるやつでしょ?どうしてそんなの持ってるの、 謎だなあ(笑)」
−−で、清水さんがあまりに違和感がないんでびっくりして。
清水「またぁ・・あまりに若くて、じゃないの?(笑)恥ずかしいなあ」
−−機会あったらまた女優さんとかやらないですか。
清水「好奇心が旺盛なんですよ、昔っから。何にでもチャレンジしてみたくて、やるか らには常に
    一生懸命になっちゃうタイプなんで。でもやっぱり、クイズ番組の方 が楽しいかな。その場
    その場の反射神経というのもあるし、チーム戦が多いので。 普段がほら、個人戦でしょ?」
−−そうですね。
清水「チーム戦がすごく新鮮で楽しいの。他の人の答えに一喜一憂するときとか」
−−でも女優さんもまたやってほしいなと思って。
清水「ありがとう!そういわれるうちが花だから(笑)。あれが幻の1本になってるの がいいんだ
    よね(笑)」
−−たぶん、見てる人も将棋指しだと思わなかったと思いますよ(笑)。
清水「何者、とか?(笑)まぁでも何やる時も、とにかく楽しんじゃおうって思っ てやっているので」
−−緊張とかしないですか?
清水「すっごいする!」
−−そうなんですか?
清水「就位式もものすごい緊
    張して、前の日とかよく
    眠れないの。舞台に立っ
    てもバクバクしてるんだ
    けどいざ本番になったら
    もうやるしかないって」
−−見えないですよねー。
清水「損だよね、やせる思いでやってるんだけどわかってもらえない(苦笑)」
−−そうは見えないけど・・
清水「舞台に立ったり、講演もそうなんだけど、見てる人が笑ってくれたり、楽しんで くれると
    すごくうれしくなっちゃう。だからそのためにはがんばっちゃいますね」
−−将棋世界の連載も、文体はすごく親しみやすいのによく読むと中身は高度、 って評判で
   すよね。
清水「ありがとうございます、そういっていただけるとがんばってる甲斐があります」
−−どういうねらいにしてるんですか。
清水「将棋世界を買ってくれる読者の方っていうのは、すごく将棋が好きだと思うんで すよね。
    半端に好きじゃ本買わないでしょ?で、そういう方は少しでも自分をよ りよくしたいと思っ
    ていると思うんで、できれば何かそのヒントになるようなこ とを具体的に示したいな、と
    思いつつ、やっぱり楽しんでもらいたいので、エッ セイにしてます」
−−ふだんのお行儀のいい清水さんと、あの文章だとすごいギャップが。
清水「え、ほんと?どっちがほんとだって感じ?全部自分なんだけどね。こういう形で 生きなき
    ゃいけない、ってものは自分にはなくって、あのときもわたし、くだけ てるのもわたし」
−−けっこうおちゃめなところもあるんですよね。
清水「気づく人は少ないけどね(笑)」
−−駄洒落っていっちゃいけないかもしれないけど、ギャグとかも好きですか。
清水「大好きですね。笑うこと大好きなので。笑えばいやなこと全部忘れそうな気が。 人間
    考え方ひとつだと思うんで、いやだなと思うとほんとにいやになっちゃうか ら、全部いい
    方に考えるようにしてます」
 
                             (インタビュー・文 大庭美夏)
 
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